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「高度寸法ツール」の実務的な使い方

たとえば、計画敷地と隣接敷地に段差がある場合、配置図などで高度(レベル)表示の書き込みはどのように行うのがよいのでしょうか。建築確認申請の斜線制限の検討や計算などにも関係するので、当然、3Dモデルや断面図とも整合させた上で、隣地境界上や道路境界上にも判り易く表示したいところです。

 「高度寸法ツール」を使う

そこで頼りになるのが「高度寸法ツール」です。このツールは、ドキュメントツールの中にあるので、一見2D書込みツールのようにみえますが、実は、「吸引」ツールとセットで使うと、3D敷地(メッシュ)の表面に吸いつき、自動で高度を表示してくれるという、たいへん優れたツールです。
一度吸いつかせ、そのメッシュ内でポイントを移動すると、それに合わせて高度表示が自動更新されます。凹凸や傾斜のある敷地での高度表示やその変更が、便利に行えます。3Dモデル上には表示できませんが、優れた「2.5Dツール」と言えます。
では、下図のような、段差のある分譲地を例に、黄色の計画敷地周りのレベル入力をしてみます。(このモデルでは、1敷地ごとに1メッシュで作成しています。)
敷地 メッシュ
 
これを平面表示にした場合、下図のように、境界点において、各方向に複数の高度を表示する必要が出てきます。
敷地 平面図
 

基本的な使い方

基本操作はとても簡単です。3つの手順でOKです。

  1. まず、ドキュメントツールの「高度寸法ツール」を選択します。つぎに「吸引ツール」アイコン(「標準ツールバー」と、「座標パレット」にある)をクリックし有効にし、そのリストの中にある「メッシュに吸引」を選択します。
    メッシュに吸引
  2. 次に、「高度寸法ツール」設定画面に入り、「固定レベル」がチェックされていない状態にします。
    固定レベル
  3. 平面図上の敷地(メッシュ)の、高度寸法を出したいポイントで、クリックします。

実務で使いこなすためのコツ

簡単で便利な「高度寸法ツール」ですが、実務でスムーズに使いこなすためには、いくつかのコツを知っておく必要があります。

【コツ①】1つの境界点に、複数の高度寸法を設定する方法

いきなり境界線上のポイントをクリックしてしまうと、どの敷地(メッシュ)に対して吸引しているのかを確認することができません。そのような時には、まず一旦、それぞれの敷地(メッシュ)内部を適当にクリックし、高度寸法を落とした後、境界点など目当てとする位置までドラッグします。ドラッグするハンドル(高さの測定点)は、マーカータイプによって多少異なりますが、下図のマーカーの場合は、円の中心(十字の交点)にあります。(文字位置を調整するハンドルが文字左下にありますが、それと間違わないよう注意。)
以下は、計画敷地奥の角、4つの異なる敷地高度が重なっている境界点における高度寸法を表示するための操作の過程です。
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右上敷地内に適当に落とした高度寸法マーカーを境界点へドラッグすると、境界点の右上宅盤の高度(+1300)に更新されるのが確認できます。
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【コツ②】高度寸法の文字位置の調整方法

コツ①の続きで、3つのマーカーすべてを境界点まで移動すると、下図のようになります。平面上の同一箇所に、複数(この場合4つ)の高度寸法文字が重なって表示されている状態です。
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文字位置を調整して、別々に表示させる必要があります。文字位置のコントロールは文字左下にハンドルがあるので、これをつまんでドラッグすればよいのですが、複数の文字が重なったものを後から引き離すのは大変困難です。また、どの敷地とリンクしている文字なのか、判別するのも一苦労です。
そこですべてのマーカーを境界点へドラッグする前に、下図のように、高度寸法の文字位置をずらしておくのがコツです。完成形を考えてうまくずらしておくと効率がよいでしょう。
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最後に、マーカーを境界点へドラッグして重ね、高度寸法表示の位置を整頓します。それぞれの敷地に高さが表示されます。
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参考までに、高度寸法を吸引していない敷地にドラッグすると、下図の緑のように、その階のフロアの高さ(ここでは±0)が表示されます。
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また、重ねてしまった後で、特定の高度寸法を選択するには、矢印ツールを、重複配置した点(ここでは境界点)の上にのせて(クリックはしない)、少し待ちます。すると、選択候補が青く浮き上がり、Tabキーを押す度に、次の候補が順番に青く表示されるので、該当の高度寸法が青く表示された時にクリックすると選択できます。
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【コツ③】マーカータイプの選択について
「高度寸法ツール」設定画面では、16種類のマーカータイプが用意されています。そのうち引き出し線付のものは、文字とポイントが結ばれていて、形式的にはわかりやすいのですが、今のところ使い勝手がよくありません。引き出し方向によって、文字に引き出し線がかぶってしまいます。反転、回転などでも、調整できません。
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本稿の図では、下図のように、マーカータイプを下段左端にし、「枠」ボックスのチェックをオンにしたセットで設定しています。見やすく、扱いやすいので、お薦めです。
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【コツ④】設定画面の「固定レベル」ボックスについて

一旦チェックを入れて設定してしまうと、次にチェックをはずしても、自動更新には戻らないので注意してください。(高度寸法を入れ直すか、アンドゥーで戻すしかありません。)
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■これもできるといいな・・・(その他の問題点について)
 

  • 私としては、詳細図などで使うマーカーとして、「枠付き文字の枠から引き出し線がある」ものが欲しいと思っています。現状のマーカータイプ「引き出し線」+「枠付き文字」で代用するのは、今一つです。
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  • 上下左右対象に美しく文字をレイアウトすることが難しいです。文字移動の基準となるハンドルが1点しかなく、また、文字の反転・回転編集もうまくいきません。それから、文字枠にもハンドルが欲しいところです。
  • 記号表記についてです。『±』記号は全角ですが、『+』『-』記号は半角設定になっていて、見た目の統一感が今一つです。フォントを変えても、統一できません。

このあたりが改善されれば、作業的なストレスはかなり無くなりそうなので、次回のヴァージョンアップでの改善を心待ちにしています。
 
 
 

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